大臨技情報システム部会 インターネット初級講座 |
インターネットはどのようにして始まったのでしょうか?
1940年代中期に生まれたコンピュータは、当初、砲弾の弾道計算や暗号解読といった目的で開発されましたが、実はインターネットも起源は同様に軍事用途だったのです。
1969年、米国防総省内の組織「ARPA」が「核戦争が起きたときに、ダメージを最低限に押さえることのできる情報ネットワークの構築」を目的としてあるプロジェクトを始めたのです。それは、「ネットワークの分散処理、パケット交換という通信技術の利用」をするといったことでした。
それまでのコンピュータネットワークというと、大きな処理能力をもつコンピュータが1台あって、そこに何台かの処理能力の低いコンピュータをつないで使うという形が一般的でした。(ネットワークの集中処理)
もし、この大きな処理能力を持つコンピュータが戦争で破壊されてしまったらどうなるでしょう?それにつながっている他のコンピュータ同士では、連絡をとりあうことが出来なくなってしまいます。そこで、ある程度の処理能力を持ったコンピュータを複数まとめてつないでしまい、あるコンピュータから他のコンピュータへ、いろいろなルートを辿ってデータなどを送るようにするシステムが生まれたのです。(ネットワークの分散処理)
これなら途中で壊れているコンピュータがあれば、そのコンピュータを避けるルートを辿ってやれば、目的のコンピュータへデータを送ることができます。
また、大きなデータをまとめて送れば、それだけ長い時間がかかってしまい、そのデータを送っている最中でなにか障害があったとき、そのデータは全部ダメになってしまいます。そうならないようにするためには、データを小さく分けてそれを送ればいいのです。そして、もし途中で障害をうけて送れなかったデータがあるとすれば、それだけをもう一度送ってやればいいのです。これが「パケット交換」の基本的な考え方です。
そして、NSF(全米科学財団)がこのネットワークに注目しました。NSFでは、研究開発に不可欠な高額なスーパーコンピュータを、それを購入する費用のない全米の研究機関でもつかえるように、このシステムを使ったネットワークを作ったのです。やがて、ARPAの作っていた「ARPAnet」は1990年、軍事専用ネットワークを分離独立させ、NSFの作っていた「NSFnet」へと吸収合併されることになり、これが現在のインターネットの基幹となりました。
これらのネットワークは「学術利用目的にかぎる」という制約があったのですが、1991年私的アクセスを提供する企業グループCIXができ、ここから一般の人々もインターネットに参加できるようになってきたのです。
さて、日本ではどうなっていたのかというと、1984年、東京大学・東京工業大学・慶応大学を中心として「JUNET」というネットワークが設立されました。これはほぼボランティアベースで運営されていたもので、1988年、今度は組織化された「WIDEインターネットプロジェクト」が作られました。そして1993年、このプロジェクトから商用利用目的として「IIJ」が設立され、日本でもインターネットが普及していったのです。
●インターネットの歴史について参考ウェブサイト
http://www.histec.me.titech.ac.jp/~ktanaka/history/internet2.html
「インターネット」を簡単に説明してみますと「世界最大のコンピュータネットワーク」ということになります。言葉を変えると、「世界中のコンピュータがつながっていて、お互いにデータや文章などのやりとりができるシステム」ということになります。
コンピュータにも人間の人種の様に、いろいろな種類があります。検査室内で、同じ種類のコンピュータ同士をつなぐ、といった状況では問題がないかもしれません。しかし、違う国にある異なった種類のコンピュータ同士では、データのやりとりができない、つまり、言葉が通じない、といった状況も出てきます。そこで、「TCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol)」という基本的な通信規約(プロトコル)が考えられ、それを使ってやりとりをすることが決められてました。これにより、世界中のさまざまな種類のコンピュータがデータのやりとりをすることができるようになりました。そして、これによってインターネットが発展していくことになります。
ここまでで、インターネットの構造と仕組みがだいたいわかってきたことと思います。では、その実体はどのようなものか、ということを考えると「インターネットとは道路の様なものである」と表現することができます。
例えば、インターネットに接続されているPCが家、ネットワークが道路で、パケットが車で道路上を走っていると考えて下さい。
Aさんの家からBさんの家へデータを持っていくときには、Aさんが家を出て道路を使ってBさんの家まで行きます。そのときに、家が離れているとすると幹線道路や高速道路を使って行くでしょう。一般的に家から幹線道路までは細い道になっていて、幹線道路や高速道路は何車線もある大きな道になっているので物を運ぶときにはスピードが変わります。また、道路の維持費用も変わります。
もし、他にもBさん宅へ物を運ぼうとする人が多いと、Bさん宅の周辺道路は非常に混雑してしまい、物を運ぶのに時間がかかってしまいます。運び込む荷物が多いと何回も往復しなければならず、やはり時間がかかってしまいます。
これらをインターネットとデータの送受信に置き換えて考えてみると、ホームページを見に行くのに時間がかかる場合の状況がよく分かるようになると思います。(インターネットでもデータの通信量が多いときのことをトラフィック過多と言います。)自宅から電話回線を使ってインターネットを利用する場合などは、その都度、電話回線を使って自宅のPCからインターネットへ道路を接続させていると考えるといいかもしれません。
また、あるコンピュータへのアクセス数が多くて渋滞が頻繁に発生しているときは、そのアクセス先と同じ内容のデータをもつコンピュータを別の場所に作り(ミラーリング)、そちらへアクセスを分散させる措置がとられることもあります。
昔は、自宅PCへ専用の道路(専用線)をひくには非常に費用がかかったものですが、最近はそれもだいぶん安くなってきました。
現在、インターネット上には1億台近いコンピュータが接続されています。それらのコンピュータはお互いに、どのようにして相手を特定しているのでしょうか?
インターネット上のコンピュータを識別するための番号として「IPアドレス」が振り当てられています。これは、インターネットに接続中のすべての機器に割り当てられているもので、電話番号みたいなものです。情報を送るときに、送り先として「164.46.180.131」みたいなIPアドレスを指定することによって、インターネット上の数多いコンピュータから特定のコンピュータを指定することができるのです。
しかし、数字の羅列だけでは人間にとってわかりにくいものになってしまいます。そこで、IPアドレスを文字に変換して利用します。それを「DNS(ドメインネームサーバー)」と言います。これは、「www.osaka-amt.or.jp」といった感じで表現され、「164.46.180.131」と同じ意味になります。つまり、IPアドレスが電話番号で、DNSは住所みたいなものです。
さらに、ホームページを見るときは、インターネット上のコンピュータの中にあるフォルダ(ディレクトリ)内のファイルへアクセスする必要があります。この場合、「http://www.osaka-amt.or.jp/lecture/inet/index.html」というぐあいに表現され、このことを「URL(Universal Resource Location):最近はURI(Universal Resource Identifier)」と言います。
●インターネット利用者数の推移(日本)
http://www.mpt.go.jp/pressrelease/japanese/denki/001227j601.html
●インターネットに接続しているPCの数(世界)
http://www.isc.org/ds/WWW-200007/index.html