〜小川培地〜
大阪市立大学医学部附属病院 中家 清隆
【目的】
Mycobacterium tuberculosisおよびMycobacterium spp.の分離培地
【組成】
(3%小川培地)
リン酸2水素カリウム | 3g |
グルタミン酸ナトリウム | 1g |
精製水 | 100ml |
2%マラカイト緑水溶液 | 6ml |
全卵液 | 200ml |
グリセリン | 6ml |
【特徴】
Mycobacterium tuberculosisは寒天やペプトン中に含まれる発育阻害物質に対し発育阻害を受け,古くから卵で固めた培地が用いられてきました。また検体は呼吸器系が多く,気道常在菌の混入が予想されるため,強酸又は強アルカリで前処理して,これらの菌を抑制するとともに培地自身にもこれらを抑制する成分(マラカイト緑)を加えています。わが国においてこの種の培地としては岡-片倉の培地が最初のものですが,この培地は当時の前処理は硫酸処理が主流だったため,酸処理に適した組成になっていたものをアルカリ処理に適した組成にしたものがこの小川培地です。名称に3%とありますが,これはリン酸2水素カリウムの濃度を示しています。このリン酸塩の濃度は前処理の水酸化ナトリウム濃度に関連し本来3%小川培地は4%水酸化ナトリウムでの前処理に適するように作られています。Mycobacterium tuberculosisの至適pHは6.8前後ですが3%小川培地のpHは約6.2でそのままでは至適pHではありません。4%水酸化ナトリウムで前処理したものを0.1ml接種されてはじめて至適pHになるようになっています。2%水酸化ナトリウムで処理された検体や尿や髄液などの遠心沈査などは1%又は2%小川培地を用いたほうがよいと思われます。
【使用法】
3%小川培地の場合は喀痰1容量に対し,4%水酸化ナトリウム2容量(検体によっては4容量)加え,攪拌し,その0.1mlを接種します。観察は3〜5日目に一度,4週目までは週2回,以降8週目までは週一回の観察が望ましいでしょう。新結核菌指針で現在推奨されている前処理はNALC-NaOH法ですが,この場合終濃度が2〜1%以下になるため,使用する小川培地は2%ないし1%小川培地がよいでしょう。
(参考文献)
新細菌培地学講座 :近代出版
新結核菌指針2000 :財団法人結核予防会
検査室から−結核菌検査のはなし:鹿住祐子,結核予防会 青木政和監修