感染症レビュー

〜腎症候性出血熱〜
(Hemorrhagic fever with renal syndrome :HFRS)

大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター 浅田 薫

◆病原体・症状
 ハンタウイルス Hanta virus が病原体である。ハンタウイルスは,RNA型でブニヤウイルス科ハンタウイルス属のウイルスである。性状は,直径 90〜115 nm の球状ないし多形性の粒子であり,エンベロープを有する。
 症状は結膜の出血や皮膚の点状出血等で激しい出血傾向,発熱と乏尿・蛋白尿等の腎症状をきたす。
 また,重症アジア型では,有熱期で始まり,4−10日:低血圧期,8−13日:乏尿期,10−28日:利尿期,回復期に分けられる。さらに,常時高度の蛋白尿,血尿を伴い,尿素窒素は50−300rに達する。

◆潜伏期
 10−30日

◆感染経路
 持続 (不顕性) 感染しているネズミ等の齧歯類に咬まれる,もしくは排泄物との接触,経気道的にエアロゾルを吸入することによって,ヒトに感染する。

◆検査所見
 3−14病日で血小板減少や蛋白尿が見られ,その間の4−6病日で白血球の増加が見られる。また,腎不全所見も見られ,血清抗体価の上昇は7日目ごろから発現し,2−3週頃にピークをむかえて長期間持続する。

◆感染症分類
 4類感染症(全数把握)である。

◆診断・治療
 確定診断は血中抗体価の出現の確認で行う。抗体の検出には間接蛍光抗体法,ELISA,白血球からのPCRによるゲノム検索がある。
 治療には,リバビリンが有効であるという報告がある。また,低血圧期に引き続き出現するショックに対する対症療法が重要である。

◆疫学
 特に中国に発生が多い。しかし,アジア大陸全域で発生が見られる。
 現在において日本では,流行はない。しかし,主要な港湾地区の多くで感染のあるドブネズミが確認されている。

◆予防
 不活化ワクチンが中国と韓国で市販されているが,日本では用いられていない。ヒトからヒトへの感染は確認されていないが,急性期にはウイルス血症を起こしていると考えられるので,それに対する対応が必要。本ウイルスは70%消毒用アルコールで容易に不活化される。

参考ホームページ
 ・札幌医科大学
 ・海外渡航者のための感染症情報
 ・三重県感染症情報センター