〜カタラーゼテスト〜

市立豊中病院 上田 恒平



【目的】
 カタラーゼの存在の有無により属間の鑑別や種の鑑別の補助を行う。
(例)
 ・Streptococcus属菌(陰性),Micrococcus属菌およびStaphylococcus属菌(陽性)
 ・Bacillus属菌(陽性),Clostridium属菌(陰性)


【原理】
 チトクローム系を持つ好気性菌および通性嫌気性菌の大部分はカタラーゼが存在する。主な例外はStreptococcus属菌である。チトクローム系を持たない菌はカタラーゼも持たないので過酸化水素を分解することはできない。嫌気性菌の多くはカタラーゼの代わりにペルオキシダーゼを持つ。


【試薬】
 30%過酸化水素水(スライドガラス法),3%過酸化水素水(試験管法)
 ・褐色瓶に保存,光線を避ける。
 ・使用しない時は冷所で保存する


【検査法】
 1)載せガラス法(スライド法)
 ・18-24時間純培養コロニーの中央を白金線で採り,きれいなスライドグラス上に置く。
 ・菌の上に30%過酸化水素水を1滴のせる。(滴瓶かパスルールピペットを用いる)
  順序を逆にすると疑陽性になることがある。
  白金線や白金耳で混ぜてはいけない。菌と過酸化水素を混合する必要はない。
 ・直ちに気泡が出るのを観察する。

 2)試験管法
 ・18-24時間純培養の斜面培地に3%過酸化水素水を1mlを直接加える。
 ・直ちに気泡が生じるのを観察する。
  血液寒天培地では行ってはならない。


【判定】
 陽性:直ちに気泡が発生し容易に観察できる。
 陰性:気泡が発生しない。


【精度管理】
 陽性:Staphylococcus aureus
 陰性:Streptococcus species
 赤血球にカタラーゼが存在するので,血液寒天培地上に過酸化水素を1滴のせると激しく気泡を生じる(陽性)。チョコレート寒天培地では赤血球は破壊されているので陰性対象として用いられる。


【注意】
 ・過酸化水素に血液寒天が混入すると偽陽性となるため,培養条件の難しい菌の場合チョコレート寒天培地上の菌を用いる。
 ・スライド法を行う場合,順序を逆にしてはならない(白金耳は偽陽性を生じ,ニクロム線は気泡の発生を妨げる)。
 ・30%過酸化水素は腐食性が強いので,手につけて火傷しないようにする(皮膚についた場合は,水ではなく中和するために70%エタノールを直ちにかける)。
 ・過酸化水素は不安定で,光線で分解しやすい。使用しない時は常に冷所に保存し,使用前に精度管理をすることが望ましい。
 ・発生する酸素によって,細菌のついたエアゾールが飛散する危険性がある。


【文献】
 竹田美文,薮内英子,三輪谷俊夫 監訳:病原細菌の生化学的検査法 原著第2版,44-49,1985