学会インプレッション2
〜第15回日本臨床微生物学会総会〜

(医)川崎病院 山之内 すみか


 細菌検査室勤務になって1年が過ぎた頃,上司から「臨床微生物学会に登録して学会に参加するように」と言われ,「ビシビシきたえるのかなー?」と覚悟していたところ,当の上司はめでたく結婚退職されてしまいました。「えーーー,何?!」と思う間も無く,学会開催の一ヶ月前に慌てて登録を済ませ"にわか会員"として今回の学会に参加した次第です。

 筑波まで出かけて行って果たして何か収穫はあるのかと不安で一杯でしたが,いざ参加してみると,いつも手にしている本や資料の著者の先生方がズラリと勢揃いで,思わず興奮してしまいました。講演では,私自信も普段から気になっていた微生物検査室の役割・あり方を述べておられる先生方が多く,自分達が持つべき姿勢を教えて頂く事が出来ました。ただ,私の勤務するような民間病院と大学・国立病院では予算や経費の関係上,自ずとできる検査は違ってくるため,どこまでやるのか線を引く必要があります。講演の内容は憧れの世界といった感じが否めませんでした。また,日頃ルーチンを行いながら感じる臨床と検査の交われないもどかしさを,シンポジウム『ICDと微生物検査室の連携』でも感じました。それぞれの演者が発表を済まされた後,意見交換の場になった時に,立派な感染制御部のある大学病院の先生の御意見ですが,「検査技師は検査だけをしていればよい。臨床を知る必要はない。」と言われビックリ!更に別の先生の御意見で,「検査技師は保険にも入らず,リスクも負わず,ラウンドに出る事にあこがれているだけだ。」と言われ,我が耳を疑ってしまいました。ラウンドに憧れるだけの検査技師などこの世の中に存在するのでしょうか?問題点を見付けていく知識や,現場でどうすればよいのか説明できる知識を習得し,経験を重ねることは非常に大切なことと思います。その知識や経験は臨床側と連携することで更に生きていくものだと,私は考えています。別の部署を経験された方であればお分かり頂けると思いますが,細菌検査は結果を報告する上で悩む事が本当に多い検査です。コロナイゼーションなのか,インフェクションなのか検体の採取方法によっても驚く程差異が生じる事があります。臨床を知りたい,臨床を見たいと思う事がそんなに悪いことなのでしょうか?

 複雑な思いがありましたが気を取り直して,ワークショップやポスターも時間の許す限り見て回りました。珍しい症例や様々な検討結果,分離状況の報告など熱心にされておられる施設が多く,あれだけの参加報告があると比較もできて勉強になりました。そして,疑問に答えて下さる兵庫県の先輩技師さん達がいてくださったお蔭で,私にとっては楽しい二日間となりました。ただ,欲張って全てをみようとせずに,狙いを定めてじっくりみても良かったかなとも思いました。

 新しい知識を吸収し,いろいろな方々と交流できるこのような場にまた参加したいと思います。