学会インプレッション1
〜第15回日本臨床微生物学会総会〜
和歌山労災病院 山崎勝利
2004年1月24日,25日の2日間にわたり,「迅速・情報・コミュニケーション」をテーマに,第15回日本臨床微生物学会総会が一幡良利会長(筑波技術短期大学衛生学)のもと,茨城県・つくば国際会議場において開催され,今回も全国から1,000名以上の参加者があった。
初日は,総会長講演にはじまり教育講演,シンポジウム2題,ランチョンセミナー4題,特別講演,教育講演,シンポジウム2題およびイブニングセミナー2題が行われた。
教育講演では,生方公子先生(北里大学生命科学研究所)が「呼吸器感染症における原因菌の迅速診断のあり方」と題して講演され,PCRによる迅速診断を呼吸器感染症に応用する研究をお話され,"抗菌薬投与前に診断する重要性"を再確認した。
「VREの現状について」がテーマのシンポジウムでは,一施設で10例以上検出された施設の発表があり,わが国においても確実にVREが蔓延しつつあり,"第2のMRSAになる危険性"と"VRE検出後の対策の大変さ"を実感した。
特別講演では,井上松久先生(北里大学医学部微生物学)が「今日の薬剤耐性菌の諸問題」と題して講演され,β−ラクタマーゼを中心に分かり易く説明され,"薬剤耐性菌の知識の整理"に役立つ内容であった。
教育講演では,山口惠三先生(東邦大学医学部微生物学)が「微生物検査(室)の将来展望」と題して講演され,感染症治療に役立つ検査を強調され,"微生物検査の本来あるべき姿"を再認識した。
「包括医療時代の微生物検査」がテーマのシンポジウムでは,包括医療における感染症検査のあり方を模索し,"経済効率優先時代における検査(医療)"を考えさせられる内容であった。
2日目は,モーニングセミナーにはじまりシンポジウム2題,特別講演,ランチョンセミナー2題,市民公開講座,特別企画が行われた。
「迅速診断と将来展望」がテーマのシンポジウムでは,迅速診断のための各種抗原検出法と塗抹検査の発表があり,あらためて"塗抹検査の有用性"を再認識した。
特別講演では,内山竹彦先生(東京女子医科大学微生物学免疫学)が「スーパー抗原性細菌毒素による感染症の発生機序」と題して講演され,馴染みの薄いスーパー抗原の基礎を分かり易く説明された。
また,一般演題146演題および話題提供の場であるワークショップ6例があり活気溢れる討論と意見交換が行われ,"次学会には一般演題を発表して参加しよう"と思った。
最後に,本総会の企画・運営に尽力された関係各位に感謝し,京都で開催される次総会の更なる発展を期待します。