〜コアグラーゼテスト〜

近畿大学医学部附属病院 前野知子


【目 的】

 微生物が酵素であるコアグラーゼ(スタフィロコアグラーゼ)の活性によって血漿を凝固することができるか否かを検査し,Staphylococcus属のコアグラーゼ産生能の有無の確認に用いられる。


【機構および特徴】

 コアグラーゼは結合コアグラーゼ(bound coagulase)と遊離コアグラーゼ(free coagulase)に区別される。結合コアグラーゼは菌体細胞表面に存在するコアグラーゼであり,これが血漿中のフィブリノーゲンに直接作用してフィブリンを形成し,菌が凝塊を形成する。一方,遊離コアグラーゼは菌が増殖する経過中に菌体外に分泌されるコアグラーゼであり,菌が産生したプロスタフィロコアグラーゼが血漿中のプロスロンビン(coagulase reacting factor)によって活性スタフィロコアグラーゼとなり,これがフィブリノーゲンをフィブリンに変化させ凝固が起こるとされている。これら両者を区別して検査することは難しいが,一般にスライド法では主として結合コアグラーゼを,試験管法では主として遊離コアグラーゼを検査すると考えられている。検査には,ウサギプラズマが用いられる。


【方 法】

スライド法
  1. 生理食塩液を1滴スライド上に滴下し,被検菌を釣菌して塗り広げないように混ぜ合わせる。
  2. ウサギプラズマ溶液1滴をすぐそばに滴下し直ちに混合する。
  3. ふつう5〜20秒以内で凝集が確認できる。15〜60秒以内に凝集すれば陽性,3分後にも凝集しないものは陰性とする。

試験管法
  1. ウサギプラズマ溶液0.5mlを分注した小試験管に被検菌を1白金耳接種し,混合する。
  2. 37℃で3時間置き判定する。陰性の場合は,さらに1晩培養し,翌日判定する。
 両法とも対照をおき,自己凝集が起こらないことを確認する。


【注 意】

● コアグラーゼテストには新鮮培養菌を用いる。
● 試験管法判定する時には,極力静かに行う。強く振動させると,凝固した血漿が砕けたり,血漿と水とに分解してしまい,培養を続けても再凝固しない。
● 冷蔵庫から出したプラズマ溶液は10〜15分間室温に放置してから使用する。
● 非常に反応が弱いため偽陰性となったり,Enterococcus属による偽陽性も報告されているため,菌種の同定には他検査での性状確認試験を併用し,総合的に判定し同定することが望ましい。




コーヒーブレイク

〜節分(恵方と寿司屋)〜




恵方(えほう)
 恵方は「明けの方(あきのかた)」ともいいます。その年の歳徳神(としとくじん)のいる方向をいいます。古くは正月の神の来臨する方向を指していたのですが,九星術が流行してから現在のような意味になりました。その方位とは


 甲・己の年 甲(寅卯の間)の方位(東微北)

 乙・庚の年 庚(申酉の間)の方位(西微南)

 丙・辛の年 丙(巳午の間)の方位(南微東)

 丁・壬の年 壬(亥子の間)の方位(北微西)

 戊・癸の年 丙(巳午の間)の方位(南微東)

で,その年の十干(じっかん)で決まります。十干は甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・壬・癸(こう おつ へい てい ぼ き こう しん じん き)の順で循環していて,これを十二支と組み合わせて六十干支(ろくっじっかんし)を作っています。つまり60年で一周するので還暦というわけですね。
 2004年は甲申(こうしん・さる)年ですから,節分の恵方は甲の方角,すなわち東微北となります。節分に寿司を買うと恵方は東北東と書いてありますが図のように真東から15度ばかり北の方を向くのが正解です。
 恵方はすべてのことに大吉で,特に本命星と恵方が同一である場合はさらに吉というわけです。本命星(ほんみょうしょう)とはその人の生まれた年に中宮にあった星のことです。 ではなぜ4つの方角が恵方なのかというと科学的な根拠はありませんから迷信です。

寿司屋の陰謀?
 さて恵方のことは少し分かったのですが,なんで寿司をまるかぶりするのでしょうか。普通に考えればバレンタインデーのチョコレートをまねた寿司屋の陰謀ということになるのですが,実際のところどうなのでしょう?
 調べてみると,大正の初め,大阪花街でお新香の漬けかかる節分の時期にお新香を巻いた海苔巻を恵方に向かって食べるという風習がありました。その後昭和23,4年頃(1948〜9)海苔の消費拡大のため関西の寿司屋と海苔業者が組んで考え出したのが現在の習俗のようです。太巻きに変わったのもこの頃で,「福を巻く 切ると福がこぼれる」ということで丸かぶりとなったようです。また寿司に巻く具が7種類で七福神を示すなどというこじつけもあるようです。