感染症レビュー

〜A群溶血性レンサ球菌咽頭炎〜

関西医科大学附属病院 中村 竜也


【はじめに】

 A群溶連菌は主に鼻汁やタンの飛沫感染で広がる。また,食品中でも増殖しうるので,まれには溶連菌に汚染された食品による集団感染も見られる。ただし,膿窩診(とびひ)などの皮膚感染症の原因にもなるが,この場合は接触感染によって広がる。


【病原体】

 A群溶血性レンサ球菌はグラム陽性のレンサ球菌といって,鎖状に増殖する球形の細菌で,血液寒天培地でβ溶血(完全溶血し無色になる)する。血清学的にA群に分類される別名:化膿性レンサ球菌 Streptococcus pyogenes が一般的に溶連菌と呼ばれている。


【臨床症状】

 感染から一般に2〜4日で突然の発熱・のどの痛みで始まる。その後頭痛,嚥下痛,頸部リンパ節主張,圧痛,扁桃の発赤腫脹がみられる。小児の場合は嘔吐,腹痛などを併発することが多い。

 猩紅熱は,溶連菌感染症のひとつで,発赤毒素に対する免疫をもたない場合に生じ,咽頭炎に加えて小さな赤い発疹が全身を覆い,苺のように赤くブツブツした舌(苺舌)になる。回復期には皮膚がむける(膜様落屑)。


【診 断】

確定診断:
 咽頭などの感染部位からA群溶連菌の証明と,咽頭拭い液による凝集反応

検査所見:
 感染部位から原因菌を検出する。咽頭拭い液と特異抗体との凝集反応,ELISAによる判定。抗ストレプトリジンO抗体(ASO)値上昇など。


【治療】

 通常はペニシリン系の抗生剤を約10日間服用。適正な抗生剤の投与開始48時間後には感染性は低下するが,確実な除菌のためには症状が消えても確実に服用して除菌することが重要。ただし,ペニシリンアレルギーの患者にはセフェム系薬剤またはマクロライド系薬剤を投与。


【予防】

 学校,家庭などの集団での発生が多いので,集団内での保菌者のコントロールが重要。実際には,菌を手によって自分の口や鼻に運ぶことを避けるためによく手を洗うことが大切。予防接種(ワクチン)は現在研究開発中。


【合併症・続発症】

化膿性の合併症:扁桃周囲膿瘍,急性中耳炎,急性副鼻腔炎など
非化膿性合併症:リウマチ熱,急性糸球体腎炎など


【感染症法における取り扱い】

 新5類感染症で,小児科定点と呼ばれる定点把握の感染症。週単位で指定届出機関のみ届け出をする。


【参考URL】

http://www.miyashita.or.jp/strept-q-a.htm
http://www.eiken.city.yokohama.jp/infection_inf/strepto1.htm



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◆ 猿まわしの歴史について◆

 明治維新までは全国各地にニホンザルの調教師?さるまわしがいたと言われています。徳川幕府に永年雇用されていたさるまわしですが,明治維新によってそのほとんどが失業し,明治以降は高洲(現在の山口県・光市)にだけ残り,明治・大正・昭和初期と発展を遂げます。

 ニホンザルの調教は大変なものです。昔のさるまわしには,多くの人が調教の過程で怪我を負ったそうです。約千年続いてきたと言われるさるまわしは,日本が高度経済成長期に突入し,昭和35年に道路交通法が公布され,大道という公演場所を奪われ,そして昭和38年頃,消滅してしまいました。 

 その後,俳優の小沢昭一さんがさるまわしの故郷を訪ねて山口県光市を訪問したのをきっかけに,昭和52年12月,村崎太郎の父,村崎義正氏によって"周防猿まわしの会"が結成されました。そして猿まわしは村崎太郎に受け継がれ現代猿まわしとして発展することになるのです。

 現在様々な地域で猿まわしが行なわれています。それらは全て,上記歴史の後,"猿まわしの会"の手法や"太郎&次郎"が独自に研究開発した現代猿廻しの手法を真似たものです。表面的な真似事は猿にとっても人にとっても大変リスクの大きいものです。

 猿に関することわざには"猿も木から落ちる"や"見ざる言わざる聞かざる"が思い付きます。木から落ちないように注意を怠らず,"見ざる言わざる聞かざる"は"見たい言いたい聞きたい"の好奇心を持って何かにチャレンジしてみようかな。でも"猿まね"に終わらないようにね。